4月19日、東京都豊島区の池袋で痛ましい事故が起きた。
昼過ぎに高齢の男性(87)が運転する乗用車が暴走し、通行人を次々とはねた。自転車で走行中だった31歳の女性とその3歳の娘が死亡したことが報じられて同情の声が広がったが、それから加害者が旧通産省の元官僚で、工業技術院の院長まで務めた人物であることが判明すると、ネットなどでは一部で激しい怒りが噴出した。
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しかも、なかなかこの高齢ドライバーが逮捕されたというニュースがないことに憤激する人たちも出ているという。
ただはっきり言って、このドライバーが元官僚だろうがなんだろうが関係ない。それよりも重要なのは、このドライバーは足が悪かった上に、駐車場にうまく駐車できないことなどもあり、「もう運転を止める」と語っていたという話だ。しかも警察によれば、このドライバーは誤ってアクセルを踏み込んでしまい事故になったのだという。
若い親子がそんなドライバーと同じ場所に居合わせてしまったのはやるせないが、本来、このドライバーはその場所にいるべきではなかったのではないか。
海外に目をやると、実は英国で少し前に、高齢ドライバーが運転を続けるべきか否かについて議論になっていた。というのも、1月に、エリザベス女王の夫であるエディンバラ公フィリップ殿下(97)が、運転していたランドローバーで乗用車と衝突事故を起こしたからだ。フィリップ殿下は無傷だったが、相手は手首を骨折した。
高齢ドライバーは運転をすべきか否か――。海外でも話題になっている議論を踏まえながら、日本で私たちは高齢ドライバーにどう向き合っていくべきなのか考察してみたい。
まずはっきりさせておきたいのは、日本は何も対策していないわけではない。2017年3月、改正道路交通法が施行され、高齢ドライバーの認知機能検査を強化している。
しかしこうした対策にもかかわらず、警視庁によれば、18年は75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故が460件も発生している。またこれらドライバーのうち、半数近くが「認知症の恐れ」か「認知機能低下の恐れ」があったという。
しかも、75歳以上のドライバーによる死亡事故件数は年々増加傾向にある。ということは、やはり新たな対策が必要だと考えられるのだ。では、どんな対策があり得るのか。
英国では、フィリップ殿下の一件の後にこんな議論になった。まず、医師から運転をやめるようアドバイスされたら、直ちに運転をやめさせるべきだということ。また英公共放送BBCは、運転に支障をきたしそうな、体に問題がある高齢者は免許を返納すべきだと書いている。これらは当たり前の話である。
また家族が高齢ドライバーをしっかりとチェックする必要があるという声も上がっていた。
英国では高齢ドライバーであっても、免許の更新時には運転テストや医学的なチェックはなく、ただ自己申告をすればいいだけだという。英国の自動車関連団体などは、どんな形でも規制をよしとしておらず、高齢ドライバーの問題でも、そこは更新時の規制ではなく、家族が止めるべきだと主張しており、そうした見解もあって現状のような緩い更新が続いている。
ただそんな緩さが、高齢ドライバーの家族を苦しめているとの指摘もある。なぜなら、彼らが高齢ドライバーに運転をやめるよう説得しなければならず、それは実に骨が折れるからだ。
引用:海外でも議論噴出 なぜ「高齢ドライバー」の運転を止められないのか